【菜根譚(さいこんたん)】柳川俊之

『菜根譚』は明朝末期に思想家の洪応明が著したとされる、人としての生き方や処世法に関する格言集。『論語』に代表される、師匠の言葉を弟子が書き留めたような「語録体」で記述されており、格言の数は前編225、後編135の計360に及ぶ。

その内容は儒家の中庸思想、道家の無為思想、仏教の出世思想を融合させたうえで、「修身・斉家・治国・平天下」の道を説くほか、処世哲学や審美についても言及している。語録体ならではの簡素な記述ながらも修辞が美しく、しかもそれぞれの格言に深い含蓄があることから、文学的な価値も高い。

なお、一見料理のハウツー本と勘違いしてしまいそうな「菜根譚」というタイトルは、宋代の朱熹による『小学』にある「菜根を咬み得ば、則ち百事做すべし」とう文言から取られたとされている。その意味は、「人の才智や修養は、艱難辛苦を経てこそ得られるものである」というものである。

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